サッカーにおけるボールの持ち方について

檜垣裕志 講師

僕たちの指導している子たちが、それ以外の場所でサッカーをしていると、逆足がどうとか、両足がどうとか言われることがあります。

先日、個人参加の場でサッカーをしていると、元プロの選手から、「君、ボールの持ち方が良いね」と褒められた子がいます。

逆足、両足と言われることもあれば、ボールの持ち方が良いと言われたり、だいたい褒めてくれるのは、プロサッカー経験者です。

でも、そのプロサッカー経験者もなぜボールの持ち方が良いのか、具体的にはわかっていません。

利き足中心

人間誰でも「利き側」が中心になるのは、自然です。

両足指導を受けていても、必ず利き足中心にはなります。

なぜなら、ボールを扱う場合、一個と一本の足が中心になりますから「利き足とボール」は自然とつながりますから。

利き足中心なのに…

人間誰もが利き側が中心であっても、そこに介する人により、ボールの持ち方は良くも悪くもなります。

日本人とブラジル人を比較してみてください。

Jリーグの日本人選手とブラジル人選手を見るとわかりやすいです。

どちらも利き足中心にはあまり違いがないように見えます。

でも、なんとなくボールの持ち方は違うように感じませんか?

それこそがボールの持ち方の違いであり、そこにはサッカー環境の違いがあるのです。

自然なボールの持ち方

日本人とブラジル人の持ち方を比較すると、どちらも利き足中心なのにそこに違いが生まれる原因として、サッカー環境の違いがあります。

ブラジルでは先ず、子どもたちはサッカーを見て、サッカーを始めます。

テレビで、スタジアムで、誰もがサッカーを見て、サッカーをやり始めるのです。

自分たちのボールはゴールするため、相手ボールになればゴールさせないためという感覚は当たり前に植え付けられた上でのサッカーなのです。

ですから、ボールを失うことが、いかにダメなことなのかがわかっていますから、利き足にボールを置いて、利き足でボールを持つということが自然になります。

ボールと一本の足のつながりが、ボールを持てる、ボールを取られないポイントですから。

不自然なボールの持ち方

日本ではというと、ほとんどが大人の指導によりサッカーをやらされますから、そこにはブラジルのような環境も感覚もなく、大人の指導によるサッカーがあるだけです。

日本でサッカーをやっていたら、必ず両足、逆足を言われます。

これは、絶対と言っていいでしょう。

問題は、ボールを持てる感覚を無視した中に両足指導があることです。

誰もが利き足中心なのは日本人でも同じなのに、必ず両足、逆足をうるさく言われ、両足の間にボールを置くとか、ボールの持ち方が良くなるような指導がありません。

だから、日本人とブラジル人のボールの持ち方に違いがあるのは当然なのです。

同じサッカーなのに、別々の見方で見ている

同じサッカーなのに、見ているサッカーが違えば、感覚に違いが生まれて当たり前です。

例えば、ブラジル人はブラジルのサッカーを見て育ち、日本のサッカーを見ることはほぼありません。

しかし、日本人は、世界のサッカーを見る機会があったとしても、どのレベルでも日本人のサッカーを見て育ちます。

ということは「日本人のサッカースタイル」が目に焼き付き、脳裏に刻まれ、その感覚が植え付けられますから、それが勝手な正解となります。

いくら世界のサッカーを見ても、ボールの持ち方の感覚、スタイル、フォームは日本人が中心として、頭には植え付けられていますから。

ボールの持ち方が良くなるには

ボールの持ち方が良くなるには、単純に「利き足だけ」でやってみてください。

それが違和感なく、それでちゃんとプレーできたら、ボールの持ち方は良いはずです。

これは真実として確信を持って言えます。

日本では必ず両足、逆足と言われて、誰もが無意識に両足で適当にボールを触っていることがあります。

ですから、適当に両足でボールを触る癖も取り除き、意識する大切さを植え付け、ボールの持ち方を良くするという矯正でもあります。

「利き足だけ」で、ミスなくボールを奪われることなく、正しくちゃんとプレー出来ていれば、確実にボールの持ち方は良いです。

しかし、ボールタッチミス、ボールコントロールミスやボールの置き場所など、そこにミスや正しい技術でなければ、ボールの持ち方は良いとは言えません。

それでも利き足にこだわれば

利き足だけでプレーしてみてとやってみたら、ファーストタッチで利き足の前にボールを置けなかったり、ボールコントロールミスがあったり、逆足側にボールが行ってしまったりなど、ボールの持ち方が良いとは言えないようなミスもあるでしょう。

そのときに、楽だからと逆足を使ったり、ダブルタッチに頼ったり、ミスを補うために逆足を使ってるようでは、ボールの持ち方の良さにはつながりません。

利き足中心に練習してると言っても、ほとんどが中途半端な利き足ですから「身体が開いた日本人のボールの持ち方」になってしまいます。

だからこそ、一度、利き足だけで試合をやってみてください。

今のは、逆足使った方がとか、ここは逆足が必要とか、言い訳はなしですよ(笑)

自分の本当の利き足のレベルがわかるはずです。

ある意味、そのレベルで利き足でプレー出来なければ、本当の意味でボールの持ち方は良くなりません。

いつも思うのは、僕自身、17歳からサッカーを始めて、このやり方でブラジル1部リーグのプロサッカー選手になれました。

だからこそ、上手くなるための紛れもない真実です。

そして、これは世界のトッププレイヤーたちの真実でもあります。

だからこそ、未来ある子どもたちには、さらなる可能性に必ずつながります。

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この記事を書いた人檜垣 裕志檜垣 裕志
1970年生まれ 石川県出身。ブラジル選手権一部リーグに所属するチーム。日本国籍者としてプロ契約した2人目のサッカー選手。ブラジル選手権一部リーグのポルトゲーザなどで活躍。当時、ゼ・ロベルト(2006 W杯ブラジル代表)とともにプレーをした経験もある。
FIFA(国際サッカー連盟)公認コーチライセンス、
CBF(ブラジルサッカー協会)公認コーチライセンスを保有
圧倒的なテクニックと確立された指導法には定評がある。現在、明光サッカースクール、東京スポーツレクリエーション専門学校などで、子どもたちにサッカーを指導している。
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