少年サッカーにおける「スペース」とは?学年別スペースの理解について
三浦です。
サッカー用語として「スペース」という言葉が使われていますが、選手も指導者も保護者もこの「スペース」の理解が難しいかな、と感じています。
サッカーを経験していない保護者にとって「そんなにスペースって大事なのか?」という疑問もあることでしょう。
サッカーとの出会いは小学生時代がほとんどというこの時代ですが、サッカーはボールコントロール技術や走力などのフィジカル以外に「頭」を使ってプレーすることも大事だよということを教えています。
頭を使うプレーのひとつが「スペース」の理解です。
小学生低学年にとってのスペース理解
小学3年生以下のサッカーでは「団子サッカー」がよく見られますね。
団子サッカーの良し悪しについては昔からいろいろ言われています。
団子状態とは、キックしても飛ばず、トラップしてもミスしてしまうこの年代の選手がボールに触ろうとして団子状態になることです。
この年代でよく言われることは、「団子の外側に広大なスペースがあるのになぜスペースを使わないのだ!」という事ですね。
選手たちはボールと相手しか見えていないので、「スペース!スペースを使え!」と言っても何のことかわからない場合もあることでしょう。
キックが上達してボールが遠く、正確に蹴れるようになると自然と選手どうしが離れていくので、三浦のチームの指導では「団子になるな!」と強く指導はしていません。
ただし、「顔をあげなさい!」という指導はしています。
ボールの近くに味方も相手も固まっている状態を見て、相手ゴールに向かってボールを運ぶためにはどうすればいいか?そこはキック力があってもなくても考えて欲しいからです。
この年代でトライして欲しいことは、キックが飛ばないならスペースにボールを持ち出そうということです。
「スペースへドリブルすること」で相手が動き、味方が動きます。人が動くとスペースが生まれます。
この時に見える景色から相手ゴールが見えたらそこがボールの通り道になります。
もし、その通り道が無くなったら(相手や味方が現れてスペースが無くなること)誰もいないところ(スペースですね)に向かってボールを運びます。
するとまた景色が変わります。ゴールに向かって攻めることは鉄則ですが、最短距離が混んでいたら周り道(スペース)をして相手ゴールに迫ります。
スペースへドリブルをすると必ず相手が奪いに来ます。スピードでぶっちぎるか、フェイントを使って置き去りにするか、ドリブルの方向を変えて味方に助けを求めるか。
選手は自由に判断できます。この判断力は持っているスキルやフィジカルに左右されますが、思考停止で団子の壁に突っ込み続けるよりも数十倍サッカーらしいプレーを引き出せます。
低学年の選手たちはスペースに向かってボールを運べ!です。
スペースを理解できない選手が味方の邪魔になる!
小学5年生のトレセンを指導していた時のことです。
所属するチームから推薦された選手を集めて地区のトレセンチームを作り、紅白戦を行いました。
チームからの推薦ですからそこそこ上手い選手たちが集まっています。しかし、上手い選手だからこその「落とし穴」がありました。
所属するチームでは何を言わなくてもボールが集まってくるのですが、トレセンチームではアピールをしないとボールが集まって来ません。
そんな状況だからなのか、そもそもスペースへの理解がないのか、スペースを理解していないプレーを見かけました。
例えばこんな場面です。
Aという選手は左サイドハーフでした。攻め込まれていましたが、相手チームのシュートをキーパーがしっかりキャッチして、左サイドバックにスローしました(手で転がして渡しました)
その時、左サイドバックの前方には縦に大きなスペースがあったので、ドリブルで攻め上がれるし、縦パスを出すことも出来ます。
A君はボールがもらえるチャンスだと思ったのでしょう。左サイドバックがドリブルで攻め上がったかと思うとその進路に立ちふさがってしまったのです。
左サイドバックがドリブルすると同時に相手チームの選手たちも集まって来ていたので、スペースが狭まっているのにA君のプレーでスペースが消されてしまいました。
ベンチのコーチたち、他の選手たちはそれぞれ「え!」という反応でした。
本来であれば、縦のコースでもらうフリをして、中に入って相手を釣る動きをしてスペースを生み出す場面ですが、A君はスペース上に立ってサイドバックに正対して「ボールをくれ」と叫んでしまったのです。
サイドバックからパスは出ず、相手選手をかわそうとしてボールは奪われてしまいました。
状況判断のミスですが、スペースを使う、スペースを生み出すという意識が足りなかったのだろう。そう思いました。
その紅白戦のあと、A君に対して「スペース」について説明しました。スペースは自然に出来るもの、スペースを作り出すという発想はなかったようです。
ワンツー(壁パス)もスペースを使うプレー
A君は所属するチームではボールを持って起点になるプレーをしていたので、ワンツーでの壁役になることはあまりなかったと言います。
次の紅白戦では、壁役を意識してワンツーで攻撃するというテーマを与えました。
ボールを持たないプレー、考えながら動くということがなかなか難しいようです。
A君の特徴は、リターンパスを足元に出すことでした。走っている味方の足元に強いパスを出すので、味方はコントロールが難しくなります。
ワンツーの場面で、ボールを持っている味方は相手ディフェンスの背後にスペースがあることを確認してワンツーを仕掛けているので、スペースでボールを受けようしています。
そのスペースへのパスをA君は理解ができなかったようです。
「スペースにパスを出すと相手に奪われそうに感じる」
「足元へのパスの方が確実」
このような感想をもらしたA君はその後、所属するチームに戻ってスペースについて勉強したようです。
スペースでボールと出会う
数ヶ月後のトレセン練習会で再びA君を指導する機会がありました。
あの時のA君と比べると成長を感じました。
紅白戦でA君の口から飛び出した声は「スペース!」「スペースに出せ!」という言葉でした。
A君が出すパスにも変化が見られました。
味方の足元でなく、味方がトップスピードで走りこんで相手に奪われないギリギリのスペースを狙ってパスを出すようになっていました。
A君に「サッカーが上手くなったね!」と声をかけました。スペースの使い方がわかってきたことが嬉しかったことを伝えました。
A君は「コーチから、スペースは9人目の味方と教わりました」
「スペースでボールと人が出会うようにするとパスがつながりやすくなりました」
「スペースがあったら、運ぶドリブルをするといいと教わりました」
アドバイスしようとしていたことはすべてA君の口から出てきました。
A君が所属するコーチも数ヶ月前のトレセン練習会でのプレーを気にしていて、自チームで徹底的にトレーニングしたそうです。
A君のコーチの「鉄は熱いうちに打て!ですからね」という言葉が忘れられません。
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