勝っても負けても何かを得る

三浦直弥

三浦です。

第44回全日本U-12サッカー選手権大会の都道府県大会がはじまりましたね。

地区予選はなく、都道府県予選からトーナメント方式という地域も多いと思います。

トーナメント戦は、絶対に負けられない戦いなので、しっかり守備から入ろう。

そんなチームが多いかと思います。

うちも以前はそうでした。

守備から入るってどういうこと?

守備について、昔の苦い経験をお話しします。

高校サッカーですと「堅守速攻」という言葉をよく聞きますよね。

トーナメント戦で、都道府県のトップに立たないと全国大会に行けない。

全国大会に行っても、1試合でも多く試合をするためには負けられない。

トーナメント戦は、しっかり守って速攻でゴールを決める。

そういう意味が込められています。

でも、少年サッカーでは、「しっかり守ろう」とか「まず守りから入ろう」というと失敗することがあります。

練習試合でしっかりトレーニングしていればいいのですが、そうじゃない場合は注意です。

例えば、試合の組み合わせが決まって、やや手強い相手と試合をすることになって、練習試合もせずに当日を迎えて

「今日はしっかり守るぞ」

と選手に伝えたら大失敗したという経験です。

三浦の経験です(恥)

しっかり守るという言葉で選手たちはどうしたのか

試合開始直後は、攻め込まずに落ち着いて守ろう。

慌てて攻撃すると、パスをカットされてカウンターを食ってしまうから。

そんなイメージで伝えたのですが、選手たちの動きを見て愕然となりました。

選手たちは消極的になって、引いてしまったのです。

ボールを持っている相手に対してプレスはかけに行くのですが、抜かれるのが怖くて間合いが遠すぎです。

ドリブルする相手を前に、ずるずるとディフェンスラインが下がります。

チーム全体が、自軍エンドから出ようとしません。

サッカーに詳しい方なら「リトリート?」と感じたことでしょう。

これがしっかり守るってことか!

ベンチにいるもうひとりのコーチと顔を見合わせて

「これでいいのか?」

互いに首を振りました。

ディフェンスラインが下がった結果、起きたことは

ディフェンスラインが下がるので、相手チームはスルーパスを出すスペースは無いものの、ディフェンスラインの前にスペースが出来てしまいます。

ペナルティエリアのライン外あたりにスペースが出来るので、相手チームはミドルシュートを打って来ました。

ゴールキーパーが叫びます。

「ラインを下げるから打たれるんだよ、ライン上げろー」

ディフェンスラインを上げても、ミッドフィールドの選手たちが引いているので、上がるスペースがありません。

中盤とディフェンスが戸惑っているうちにも、シュートが飛んできます。

正面から打たれるので、センターバックやセンターハーフの選手たちがゴール正面を固めようと動きますが、相手チームはサイドのスペースを上手く使ってゴール前にクロスを入れてきます。

ベンチにいるコーチと顔を見合わせて、ハーフタイムにどういう指示をしようかと悩んだものです。

守備は前線から!勇気を持ってプレスをかける

あの試合は、内容どおり負けてしまいました。

敗戦は、選手たちのせいでなくコーチとして大失敗です。

少年サッカーの場合は、相当なトレーニングを積まないと自軍エンドでの守備ブロック(守備のための組織的な並び方)は作れません。

作れたとしても、ボールを奪ったあとの攻撃への切り替えを素早くするとか、相手にボールを奪われたあとにまた守備ブロックを作る動きなど、三浦のチームにとっては練習時間がいくらあっても足りません。

そんなチームの選手たちには、前から守備を仕掛けていく「フォアチェック」を徹底しようと決めました。

前からプレスをかけることですが、当然、フォワードが相手エンドでボールにプレスをかけます。

プレスをかけることで、相手チームはパスを出し始めます。

そのパスを、2列目や3列目の選手がインターセプトを狙います。

チーム全体でのトレーニング

言葉にすると簡単ですが、当時の三浦のチームには難しいものでした。

プレスが出来ても、出てきたパスを奪えないのです。

つまり、ポジショニングと連動が出来ていなかったのですね。

守備は、ディフェンスラインの3人だけの仕事ではありません。

ピッチにいる8人全員が連動する必要があります。

FWとDFラインの距離が長くなりすぎないように、動き続ける必要があります。

距離が長くなると、そこは相手にスペースを与えているということになります。

フォアチェックのトレーニングで、選手全員のポジションに対する意識が少しずつ高まったように感じました。

ボールだけなく、味方の位置を見るようになりました。

ある練習試合で知り合いのコーチから

「チームが連動してきたね」

と言われて、自分では気づかない選手たちの成長を感じました。

今、U12選手権大会を戦っているチームや準備をしているチームは、目の前の勝利が目標かと思いますが、勝っても負けても何かを得て欲しいと思います。

思ったような試合運びじゃなくても勝つことがあれば、内容は文句ない試合でもゴールを失うことがあります。

試合の後に、選手たちにどんな言葉をかけることが出来るか。

選手たちとともに準備して来た長い期間や苦労を思い出して言葉を考えています。

一緒に頑張りましょう!

この記事を書いた人三浦直弥三浦直弥
小学4年生からサッカーを始め、中学、高校、大学、社会人とサッカーを楽しみつつ、大学生の頃からコーチングの道を歩み始め、指導の楽しさも知る。現在アラフィフのサッカーマンである。理論派でありながら熱い血潮を持つタイプ。サッカーの本質を突く指導がモットー。現在は、東京都のある街クラブでヘッドコーチを努めている。
好きな選手は故クライフ、そして自分の姓と同じ三浦カズ!好きな指導者は、森保監督の育ての親とも言えるオフト、そしてオシム。座右の銘は「諦めたらノーチャンス」。チーム運営や保護者対応などにも詳しく、近年はメルマガやブログへの寄稿活動も行っている。
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